京都大学
大学院情報学研究科通信情報システム専攻
委員名:髙木 直史

研究概要

当研究室では,超伝導単一磁束量子(SFQ)回路の設計技術および設計支援技術の研究を行っています。SFQ回路は,超伝導ループ内で量子化された磁束の有無および磁束が移動する際に発生する微小な電圧パルス(SFQパルス)の有無を論理値‘1’と‘0’に対応させて演算を行うデジタル回路で,数十GHz以上の高速動作性と,従来の半導体デバイスに比べて3桁以上小さな低消費電力性をもつ次世代集積回路技術です.

1SFQ回路による演算回路

当研究室では,SFQ回路による演算回路の研究開発を行っており,これまでに加算器,乗算器やALU(算術論理演算ユニット),浮動小数点加算器,浮動小数点乗算器,浮動小数点除算器等を開発しました.

2SFQ回路の設計支援技術

大規模なSFQ回路の設計には,設計支援ツールが不可欠です.SFQ回路は超高速で動作し,またパルスの有無を論理値‘1’と‘0’に対応させるパルス論理で動作するため,電位の高低を論理値‘1’と‘0’に対応させるレベル論理で動作する半導体CMOS回路の設計支援ツールをそのまま用いることはできません.当研究室では,SFQ回路用の配線手法,静的タイミング解析手法,論理設計検証手法等を開発し,これらをCADツールとして実装し,他大学の研究グループ等にも提供しています.

3SFQクロックレスゲート

SFQ回路はパルス論理で動作するため,通常,各論理ゲートはクロック入力を持ち,クロックパルスにトリガーされてパルスを出力します.このため回路は論理ゲート一段がパイプラインの1ステージを構成するゲートレベルパイプライン回路となり,ゲート段数調整(パスバランシング)のための大量のクロック付きバッファ(Dフリップフロップ)の挿入や大規模なクロック供給ネットワークが必要です.当研究室では,クロック入力を持たず,データパルスにトリガーされてパルスを出力するクロックレスゲートを提案し,クロックレスゲートを含むSFQ回路の設計手法の研究開発を行っています.