京都大学
大学院工学研究科電子工学専攻集積機能工学講座
委員名:掛谷 一弘

研究概要

今や日常生活にさえ不可欠な集積回路素子の開発には固体中での電子の振る舞いを理解することが不可欠です。現在の固体デバイスは電子と原子の量子力学的な相互作用から記述される原理に従っています。一方、超伝導や磁性などの現象では電子同士の量子力学的な相互作用(電子相関)が重要な役割を果たしています。電子同士が強く相互作用する物質(強相関電子系)においては、未解決で興味深い問題は至るところにあり、あたかも自然が私たちに挑戦を挑んできているようです。このような、一見複雑な現象を「物理学」という言葉を使って自然と対話しながら簡潔に理解し、次の次の世代のデバイスへ向けて物質の潜在能力を発掘し、持続可能な社会の形成へ貢献することが私たちの研究目標です。

1高温超伝導体のジョセフソン接合の物理と応用

超伝導の巨視的波動関数を電気信号に変換するのがジョセフソン接合であり,現在,電圧標準に使用されています.多くの高温超伝導物質内部に存在する固有ジョセフソン接合は高温超伝導の物性研究やデバイス化に極めて有利です.また,集積化されたジョセフソン接合の物理は非線形同期現象の典型的なシステムとして応用数学・生物学、電力ネットワークや人間関係に至るまで幅広い応用が可能です。

  • 高温超伝導体からのテラヘルツ電磁波発振のメカニズム解明と高出力化
  • 巨視的量子トンネル現象の観察と高温超伝導量子ビットの実現
  • 高温超伝導のエネルギー構造からの高温超伝導発現機構解明へのアプローチ

2テラヘルツ領域の光源と電磁応答に関する研究

電波と光の間の周波数に位置するテラヘルツ領域は現在開拓が進められている熱い周波数帯域です. 空港で行われている保安検査、医療診断、超高速データ転送への応用が期待されています.私たちは、高温超伝導体を用いて新しい機能をもつテラヘルツ光源を開発しています。また、この周波数には新しい物理現象が眠っています。これを時間分解で観察し、ミクロな物理現象を可視化する研究を進めています。

  • 高温超伝導体テラヘルツ光源の多機能・実用化
  • 時間領域分光法によるテラヘルツ応答を用いた物性研究