名城大学
理工学部メカトロニクス工学科 先端デバイス研究室
委員名:井上真澄

研究概要

当研究室では,以前行なっていた酸化物高温超伝導体の薄膜作製技術及びそのエレクトロニクス応用を踏まえて,現在は超伝導薄膜デバイスの動作ダイナミクスについてシミュレーションによる検討を行なっており,ボルテックス挙動のほか,熱援用スイッチングデバイスの設計指針になるような動作機構の検討を行っています。

1酸化物高温超伝導体の薄膜作製技術・ 応用および光信号によるSFQ 回路駆動

以前の研究では,これまでにBa1 xKxBiO3( BKBO )を用いて,酸化物超伝導体では世界で初めてトンネル・ジョセフソン接合を作製しました(図 1 )。また,光ダイオードを利用した光入力インターフェイスを研究・作製し,高周波光信号による SFQ 回路の駆動に世界で初めて成功しました。その後,従来の高温超伝導体回路の報告を超える 500GHz の動作実証や光入力インターフェイスや高温超伝導体ナノブリッジ作製技術の検討を行い,世界最高レベルの,幅 30nmで良好な特性を有するブリッジを作製する技術を開発しました。この作製技術に基づいて電流電圧特性が非対称となる非対称形状ナノブリッジデバイスの検討を行いました。

SrTiO3バイクリスタル基板上の BKBO 接合の電流-電圧特性
SrTiO3バイクリスタル基板上の BKBO 接合の電流-電圧特性

2超伝導薄膜デバイスの動作ダイナミクス

曲がる前後で幅の異なる超伝導細線の電流分布と温度分布のシミュレーション
曲がる前後で幅の異なる超伝導細線の電流分布と温度分布のシミュレーション

上記研究の後,ナノブリッジデバイスの動作解析におけるシミュレーションを充実させて,時間依存 Ginzburg Landau (TDGL) 方程式を用いたシミュレーションにより超伝導薄膜デバイス中のボルテックスの挙動について検討し,モートへのボルテックスの捕獲の様子などを可視化しました。また,熱拡散方程式と TDGL 方程式を組み合わせることで熱援用スイッチングデバイスの動作ダイナミクスの基礎的部分も可視化して特性解析を行い(図 2 ),設計指針となる知見を得て,超伝導デバイス技術の進展に寄与しようとしています。