東京都市大学
大学院工学研究科情報工学専攻
コンピュータシステム研究室

委員名:陳オリビア

研究概要

AIが本格的に普及するSociety 5.0では、限られた電力で大量のデータを処理すべく、従来の半導体技術に比べて桁違いに計算性能の高い計算基盤技術が必要になります。当研究室では、極めて低電力を有する超伝導ロジック「断熱磁束量子パラメトロン(AQFP)」を対象としたハードウェア、ソフトウェア、設計技術、アルゴリズムのシステム階層横断した研究によって、半導体技術より5桁上回る計算性能を有するAIシステムの実現を目指しています。

1断熱超伝導磁束パラメトロン回路に向けた
自動化設計ツール群の開発

断熱磁束量子パラメトロン(AQFP)回路は、ジョセフソン接合を用いた超伝導論理回路であり、beyond-CMOSデバイスの中でも熱力学限界を挑む低電力性を有する技術として注目されています。AQFP回路は、 ACバイアス電流を用いてポテンシャルエネルギーを断熱的に変化させることによって、スイッチング動作に伴う消費エネルギーを劇的に減少させることができます。これまで、図1に示すように、AQFP回路の論理表現と整合性が高い多数決論理(出力が入力の多数決により決まる)を基に、回路システム化に不可欠な自動化設計ツール群の開発を、他の研究機関と協力して進めてきました。具体的には、多数決論理合成手法の確立と最適化、AQFP回路特徴(多相クロック駆動法によるゲート同期)による遅延素子挿入法とフェンアウト割り当て法の確立と最適化、機械学習を用いた自動配置配線ツールを開発しています。

ハードウェア・ソフトウェア・アルゴリズムを融合したデザインフレームワーク
ハードウェア・ソフトウェア・アルゴリズムを融合したデザインフレームワーク

2確率計算を用いたAI加速器の応用

AQFPゲートのポテンシャルエネルギーは、熱雑音により確率的に変化させることができるため、極めて容易に確率的値を生成することができる。我々は、 AQFPの有する確率的状態遷移特徴を生かした確率計算手法に基づいた深層学習専用加速ハードウェアを開発し、小規模の演算回路の実装と4.2 K動作実証に成功しました。

Bitonic-sortingを用いSCベース畳込み演算
Bitonic-sortingを用いSCベース畳込み演算
AQFP-SCNN演算チップ写真
AQFP-SCNN演算チップ写真