国立大学法人 豊橋技術科学大学
エレクトロニクス先端融合研究所
委員名:田中三郎

研究概要

当研究室では、高温超伝導SQUID(Superconducting QUantum Interference Device) 磁気センサに関する研究を行っています。SQUIDを用いれば地磁気の10億分の1の微小磁場検出が可能です。従来は液体ヘリウムを使用しなければ動作せず、それらの用途は脳磁計測、重力波の検出などの狭い分野に限られていました。しかし、1986年以降、高温超伝導薄膜を用いたSQUIDが開発されて、液体窒素で冷却するだけで動作できるようになり、その応用範囲が拡がってきました。研究室ではY系酸化物超伝導薄膜によるSQUID磁気センサ開発と医療応用や金属異物検査などの新しい応用技術の研究を行ってきています。

1医薬品・食品内異物検出技術の開発

医薬品・食品などの中に含まれる金属異物を超高感度で検出できる装置の開発を行っています。これは100ミクロンオーダーの磁性金属異物を確実に検出できる装置で、検査対象物の形状、性状(水分・塩分・温度等)や包装材の影響を全く受けないので信頼性の高い検出が期待できます。これまでに九州地方での食肉センターや北海道の乳業メーカーに実用機が納入されています。

食品金属異物検査装置
食品金属異物検査装置

2工業製品用金属異物検査装置の開発

リチウムイオン電池用金属異物検査装置
リチウムイオン電池用金属異物検査装置

リチウムイオン電池や半導体封止材、フイルムなどに含まれる金属異物を超高感度で検出できる装置の開発を行っています。これはSQUID磁気センサを検査対象に接近させる技術開発により、50ミクロン以上の磁性金属異物を確実に検出できる技術です。現在、直径20ミクロン程度の検出が可能となってきています。液体窒素冷却で動作するマグネトメータタイプとグラジオメータ-(差分)タイプの2種類のSQUID磁気センサを開発済みで、用途に応じて使い分けます。液体中の微小金属異物検査も可能です。

3センチネルリンパ節検出、
DNAプローブシステムの開発など医療応用

放射性元素をマーカーとして体内に入れて、それを追いかけることによって、リンパ節の位置を同定する方法が開発されています。我々は、放射性元素を磁性微粒子に置き換えて高感度磁気センサでトレースする安全なリンパ節同定技術を開発しています。 これまでに、実験動物のラットを用いた実験に成功しています。DNAプローブはガラスなどの基板上に数百から数万のDNA分子を置き、試料DNAとの結合が起こるかどうかで試料中に目指す遺伝子が存在するかどうかを調べるものです。 我々はSQUIDを用いて磁性微粒子で標識した遺伝子を高感度で検出する技術の開発を行っています。

センチネルリンパ節の検査装置
センチネルリンパ節の検査装置