活動方針

超伝導現象の特徴である巨視的量子効果等を利用することにより、他に類を見ない高性能性と新機能を有する先端エレクトロニクスシステムを開拓することが可能となります。その研究対象は極めて広範囲であり、バイオ・材料分析などの先端計測システムから通信・情報システムに及んでいます。これらの多様な応用を実現するために、各方面で多くの研究開発が続けられており、本委員会は、我が国の大学等と産業界の研究者間の協力と相互啓発により、この分野での研究を促進することを目的として、昭和57年に発足しました。

超伝導エレクトロニクスを用いた実用システムとしては、これまでに、脳/心臓機能の医療診断装置、電圧標準などの精密計測装置、電波天文用受信機、移動体通信用受信システム等が開発されており、それぞれの分野の発展に大きく貢献して来ました。また、単一量子磁束回路を用いた高速・低消費電力な情報処理システムも開発の最中です。これらに加えて、最近では、X線・光・テラヘルツ検出器、量子コンピュータや量子暗号通信用の素子、及びバイオ検査・材料分析機器、などの新しい素子と応用システムの開発研究が急速に進展しています。

本委員会では、これまでに築いた産官学の研究協力体制の基盤をさらに充実・拡充することにより、超伝導を用いた先端エレクトロニクスシステムの実用化に向けての研究・調査活動を強化していきます。また、新規デバイスなどの新領域を開拓すると共に、21世紀に必要とされるエレクトロニクスシステムの動向調査を通して超伝導エレクトロニクスの一層の発展を図ります。

本委員会で対象とする代表的な研究・調査課題を図に示します。以下の6つの分野を対象としています。

  1. 医療・バイオ分野
    SQUID磁気センサを用いた医療・バイオ検査機器。脳磁計(MEG)、心磁計(MCG)、脊髄誘発磁界計測、バイオセンサ(免疫検査)、超低磁場MRI/MRI等。
  2. 分析・検査分野
    高感度な超伝導検出器とこれを用いた材料分析・解析機器。微量元素分析(X線分析)、質量分析(蛋白質)、非破壊検査、LSI検査、食品検査等
  3. 通信システム
    マイクロ波からミリ波・テラヘルツ波における高感度検出器と通信システム。移動体通信、電波天文、気象/環境計測、テラヘルツ計測
  4. 情報処理システム
    次世代量子デバイス及び情報処理システム。 SQF集積回路、高速A/D変換、超伝導量子コンピュータ、量子暗号通信等
  5. デバイス
    新材料/新機能デバイスによる新領域の開拓
  6. 動向調査
    21世紀の重点研究分野における超伝導エレクトロニクスの役割